「歯が1本くらいなくても大丈夫」
そう思っていませんか?
実は歯を失うことは、「噛めなくなる」だけではありません。全身の健康や生活の質(QOL)、さらには将来かかる医療・介護費にも大きく影響するといわれています。
今回は、歯の喪失が身体や生活に与える影響と、定期検診・早期治療の重要性についてご紹介します。
歯を失うと起こるさまざまな影響
歯は食事をするためだけのものではありません。
しっかり噛めることは、健康を維持するためにとても重要です。
① 栄養状態の悪化・体力の低下
歯を失うと硬いものが食べにくくなり、肉や野菜、ナッツなどを避けるようになる方が少なくありません。
その結果、
- タンパク質不足
- ビタミン不足
- 筋力低下
- 体重減少
などにつながり、フレイル(加齢による心身の衰え)のリスクも高まります。
「食べられるものを食べる」のではなく、「必要な栄養をしっかり食べられる」ことが健康寿命を延ばすポイントです。
② 認知症のリスクが高まる
噛むことは脳への刺激になります。
しっかり噛むことで脳の血流が増え、記憶や判断力を司る部分が活性化すると考えられています。
歯の本数が少ない方では認知機能の低下との関連を示す研究もあり、お口の健康を守ることは脳の健康を守ることにもつながります。
③ 脳血管疾患や全身疾患との関係
歯周病が進行して歯を失うケースは少なくありません。
歯周病菌は血液を介して全身に影響を及ぼし、
- 脳梗塞
- 心筋梗塞
- 糖尿病の悪化
などとの関連も報告されています。
つまり、お口の健康管理は全身の健康管理でもあるのです。
④ 残っている歯も失いやすくなる
歯は1本失うだけでも噛むバランスが崩れます。
周りの歯に負担が集中し、
- 歯が揺れる
- 割れる
- 虫歯や歯周病が進行する
など、次々と歯を失う悪循環に陥ることがあります。
そのため、歯を失わないことはもちろん、失った後の適切な治療も重要です。
⑤ 胃腸への負担
よく噛めないまま飲み込むと、胃や腸に負担がかかります。
消化不良を起こしやすくなったり、食事そのものを楽しめなくなったりすることもあります。
生涯利用費が高くなる理由
歯を失うと、
- 入れ歯
- ブリッジ
- インプラント
などの治療が必要になることがあります。
さらに、噛めないことによる栄養状態の悪化や全身疾患、介護が必要になるリスクが高まることで、生涯にかかる医療費や介護費が増える可能性があるといわれています。
もちろんすべての方がそうなるわけではありませんが、「歯を守ること」は将来への健康投資ともいえるでしょう。
定期検診と早期治療が一番の節約
虫歯や歯周病は、初期のうちは自覚症状がほとんどありません。
痛みが出てから受診すると、
- 神経の治療
- 被せ物
- 抜歯
など、大きな治療になることも少なくありません。
一方、定期検診では、
- 虫歯の早期発見
- 歯周病のチェック
- 歯石除去
- クリーニング
- ブラッシング指導
などを行い、お口のトラブルを未然に防ぐことができます。
結果として、治療費や通院回数を抑えられる可能性が高くなります。
歯は「治す」より「守る」時代へ
天然の歯は、一度削ったり失ったりすると元には戻りません。
だからこそ、
「悪くなったら治療する」
ではなく、
「悪くならないように予防する」
という考え方がとても大切です。
定期検診は、お口の健康を守るだけでなく、全身の健康や将来の生活の質を守るための第一歩です。
「最近歯医者に行っていないな…」という方は、この機会にぜひ検診を受けてみませんか?
毎日の歯みがきに加えて、歯科医院での定期的なメンテナンスを続け、大切な歯を一緒に守っていきましょう。きっとそれが、将来の健康と笑顔、そして生涯利用費を抑えることにもつながります。
監修歯科医師 土井幹夫
香里園レジデンス歯科・矯正歯科